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9ミリ拳銃@現実 1982年に陸海空自衛隊に採用された自動拳銃。 スイスのシグとドイツのザウエル社の共同開発で作られたSIGP220をミネベアがライセンス生産したもので9㎜口径弾を使用する。 装弾数9+1、初速は345m/s 使用弾薬は9㎜拳銃用弾倉・ハンドガンの弾を使用。
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Secret Window 水明が電話を切った。その口元には、これまで浮かべたことがない優しい微笑みが刻まれていた。 それほどまでに、彼の弟は心を許せる相手なのだ。母親との関係を修復し切れていないからこそ、それがユカリは正直羨ましかった。 彼から一旦目を逸らす。波音が耳朶を満たす。砕け散る飛沫が旋律に度々変化を差し込んでいく。東に広がる赤い海は、ある程度近づくとそれ自体が微かに昏く光を放っているのが分かった。 水明が湖の沖合に蠢く大きな影を目にしたために、ユカリたちは一度東へ進路をとった。 最短経路を辿れなかったことに――それがユカリ自身の安全も考えた結果とはいえ――もどかしさはあるものの、水明に抱いていた畏怖は、もうユカリの心の中から消失していた。 鬼の表情に見えたのは、水明が辛さに耐える表情だったのだ。命を傷つけ、奪う――その行為の罪深さと痛みに歯を食いしばる。それを怖いと拒絶するのは、あまりに卑怯だ。フェアじゃない。 鼠であっても、殺して気持ちのいい人間は少ないはずだ。まして、それよりも大きく、苦痛を表現する生き物ならば尚のことだ。 命を嬲ることに喜びを見出す類の人間はいるが、少なくとも水明は違う。 ふてぶてしくて、皮肉屋だが、それは彼の持つ優しさの裏返しだ。 水明は優しい。無関心に見えて、しっかりと周りを見て他人に心を配っている。それはタイプこそ違えど、友人のチサトを思い起こさせた。 ミカと同じく、彼女もこの町を彷徨っているはずだ。それを思うと、鼓動が――幾許か早くなる。 水明に視線を戻す。彼の背後、映画に出てくるような装甲車が置かれた広場の向こうに、大きな建物の影がある。近くを通った時、病院というよりも大学だなと水明は言っていた。地図の表記に従えば、あそこが"研究所"に当たるのだろう。クーンツ通りにて実際目にした看板にも、辛うじて研究所という文字が読み取れた。 落書きのような地図の情報の方が正しいとは、なんとも皮肉的だ。 「ねえ、ここから抜け出せるって本当?」 南に向かって歩き出した水明を追い掛けつつ、問い掛ける。 水明の電話は殆ど最初から付いていけなくなったため、内容の大半は聞き流していた。 ただし、脱出できるという、その部分だけはしっかりとユカリの記憶に引っかかっている。 振り返ることなく、水明は滔々と述べ始めた。 「"氷室邸"に"黄泉の門"というものがあるらしい。拾った地図で"屋敷"と書かれている所だろうな。黄泉っていうのは分かるとは思うが冥府――死者の国のことだ。 つまりは、こちらではない、あちらの世界。異界ということだ。古来より、異界ってのは険しい山の頂や海の向こう――そして、地下の奥深くにあると考えられてきた。だが、一方で、その異界に通じる扉、異界との繋ぎ目ともいうべきものは人の生活の近くにあるとも考えられてきたんだ。 六道珍皇寺という寺を知っているか? そこの井戸は冥界に通じていて、小野篁という役人が夜な夜なそこを通って、地獄で閻魔大王の補佐をしていたらしい――」 「いや、そんなデンセツはどうでもいいんだけどさ」 半眼で告げると、水明は肩を竦めて見せた。 「異界ってのは、そこまで隔絶されたもんじゃないってことさ。必ず、現世との接点があり、ふとしたことで混ざり合ってしまう。そのことを、日本人は理解するまでもなく感性として受け入れ、文化に取り入れてきた。 たとえば、能は過去の召喚だ。楽士はその演目の人物そのものとなり、舞台は過去の一篇を浮き世に召喚している。舞台で繰り広げられるのは過去の再現ではなく、過去そのものだ。 百物語もそうだ。閉め切った部屋に蝋燭を百本立て、暗闇の中で人々が集う。日常と異なる空間。それを作り上げることが、百物語の目的の一つなんだ。異界は簡単に呼び出せ、作り上げることができる」 「いや、言ってることは分かるけど、それって今のこことは違うでしょ? オジサンが言ってるのは、あくまで建前というか――」 「観念的、か? そうだな。そのとおりだ。だけどな、そいつをその場にいる誰もが信じていることが重要なんだ。ただそれだけで異界なんてものは、容易に現れ、現実を侵食する。その入り口もな。いとも簡単に、裂け目は作られる。襖、階段、穴、辻――あらゆるものが、裂け目となることができる。更に言えば、入り口がなければ、異界は"異界"にならない。何かに観測されなければ、異界は存在できないんだ。異界は、確かな形を以て存在するものではないからな。だから、完全に閉じて、その世界だけで完結することはできない」 「えーと、これまでの無駄話を全部端折ると、絶対にあるはずの異界と現実の接点が、そのお屋敷にあるってこと? だけど、その屋敷って本当にあったとしても日本にあるんでしょ? じゃあ、ここのは本物じゃなくて偽物でしょう?」 「いい質問だ。長谷川の言うとおり、本物じゃないはずなんだ。だけどな、その門は化け物によって厳重に封印されているらしい。どうしてだろうな?」 答えは既に分かっているという口調で水明は問い掛けてくる。そのことに苛立ちつつ、ユカリは少し逡巡してから答えた。 「……開かれると、何か都合が悪いから?」 「そういうことだな。もう一つ。具現化した以上、それはこの町の一部として機能しているはずなんだ。氷室邸は、この町における異界の繋ぎ目としての役割を引き継ぐには適しているように思う。頭の回転は心配ないようだな。一年ぐらいのハンデ、君なら十分取り戻せるだろ」 肩越しにそう水明は言った。彼が言っているのは来年のことだ。 そんなこと考えもしていなかったことに、ユカリは気づいた。 周囲が受験勉強や就職活動に邁進する中、ユカリはチサトとミカのことで気が気ではなかった。サイレントヒルからの手紙が来てからは、猶更であった。 チサトは留年して、そして進学するだろう。単位は自分も危うい。仲良く留年か。ミカも留年するだろうから後輩のままだ。 だが、自分は――どうしたいのだろう。未来のビジョンを何も作ってこなかった。 変わらぬ日々なんて、どこにもないのに――それを求めてはいけないのだと、あの黄昏の町で悟ったのだから。 いつだって変っていかなくてはならないのだ。時は必ず終わり、誰もが変化していく。 と、水明が面白そうに口を覆っている。眉を顰めて何だと問いかける。 「いや、元の時代に戻れば君は俺より年上なわけだ。それを考えると、こうして教師のように接しているのがおかしくてな。マーティ少年の気分だ」 「……うわ、サイテー。オジサンより年上っても母親って程の差じゃないでしょ……」 呻いたとき、何の前触れもなく周囲にヘリコプターのローター音が響いた。すぐ近くの様な、ずっと遠くの様な――居心地の悪くなる響きが周囲を包む。 上空を見上げても何も見えない。そうしている内に西で大きな物音がした。その前後から敷地内では銃声が鳴り響き、大きく物が破壊される音まで聞こえてくる。 水明は眼差しを厳しくすると、急ぐぞと告げた。 「あっち、人がいるみたいだけど……」 「そいつはどうかね。だがどちらにしろ、銃を持っている相手に俺たちがしてやれることは何もない。的になるか、足手まといが関の山さ。俺たちは神様じゃない。やれることをやっていこう。岸井くんにライオンを引き取って貰わなくちゃな」 最後だけ、水明は冗談めかして言った。しかし、ユカリはそれに食ってかかる気にはならなかった。 騒ぎの遠鳴りを背に受けながら、ユカリは水明の背中を追う。水明の懐で、バイブ音が場違いに悠々と奏でられた。 【E-3/南部/一日目真夜中】 【霧崎水明@流行り神】 [状態]:精神疲労(中)、睡眠不足。頭部を負傷、全身に軽い打撲(いずれも処置済み)。右肩に銃撃による裂傷(小。未処置) [装備]:携帯電話、懐中電灯 [道具]:10連装変則式マグナム(0/10)、ハンドガンの弾(15発入り)×2、宇理炎の土偶(?) 紙に書かれたメトラトンの印章、自動車修理の工具 七四式フィルム@零~zero~×10、鬼哭寺の御札@流行り神シリーズ×6、食料等、他不明 [思考・状況] 基本行動方針:純也と人見を探し出し、サイレントヒルの謎を解明する。 1:街の南西へ向かい岸井ミカと式部人見を保護する。 2:アレッサ・ギレスピーと関係した場所、および氷室邸を調査する。 3:そろそろ煙草を補充したい。 ※ユカリには骨董品屋で見つけた本物の名簿は隠してます。 ※胸元から腹にかけて太陽の聖環(青)が書かれています。 神の力で創り出されたクリーチャーに対しては10m以内に近付けば衰弱させられるという効果を持ちます。 ※氷室邸の黄泉の門がサイレントヒルからの脱出口になるのではと考えています。 【長谷川ユカリ@トワイライトシンドローム】 [状態]:精神疲労(中)、頭部と両腕を負傷、全身に軽い打撲(いずれも処置済み) [装備]:懐中電灯 [道具]:(水明が書き写した)名簿とルールの用紙 太陽の聖環の印刷された紙@サイレントヒル3、地図 サイレントヒルの観光パンフレット ショルダーバッグ(パスポート、オカルト雑誌@トワイライトシンドローム、食料等、他不明) [思考・状況] 基本行動方針:チサトとミカを連れて雛城へ帰る 1:ミカを助けに街の南西に向かう。 2:とりあえず水明の指示に従う。 3:チサトを探したい。 4:無事とはいえシビルが心配。 back 目次へ next Edge of Darkness 時系列順・目次 PITCH BLACK Edge of Darkness 投下順・目次 復讐の女神 back キャラ追跡表 next Edge of Darkness 霧崎水明 鬼の霍乱 Edge of Darkness 長谷川ユカリ 鬼の霍乱
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ジム・チャップマン 出典:『バイオハザードアウトブレイク』 年齢/性別:24歳/男性 外見:黒人男性。地下鉄職員の制服、帽子を身につけている。髪は短く刈り上げているが帽子に隠れている。 環境:ラクーン・シティで地下鉄職員として働いていたが、生物災害に巻き込まれている。 性格:気さくで陽気だが、臆病さや度量の狭さを見せることも。悪気はないのについ一言多く、よく周囲の顰蹙を買う。 能力:死んだふり:死んだふりをしている間は敵に気づかれなくなる。少なくともバイオハザードに登場するクリーチャーには有効。 死んだふりをしている間はウィルスの進行が加速してしまう。 アイテムサーチ:初めて来た場所でもアイテムがどこにあるかわかる。アイテムの種類は識別できない。 コイントス:コイントスをする。「表」が出るとクリティカル率が15%ずつ上がり、最大4回まで有効。 パズルが得意。 口調:一人称「オレ/オレ様」 二人称「アンタ」 誰に対しても親しげに話す。 交友:バイオハザードアウトブレイクのメインキャラクター全員と面識があります。 マークとは仲がよく、ヨーコに気がある様子(ヨーコには快く思われていなかった)アリッサを恐れているらしく非協力的。 備考:アウトブレイクFILE1「決意」のペアED後から参加。デイライトは接種していません。
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グレネードランチャーHP@現実&バイオハザードアンブレラクロニクルズ 見た目はM79グレネードランチャーで相違点はピストルグリップではなくライフルストックになっている点のみ。威力は若干強化されている模様。 グレネードランチャー(以下GL)系武器の中でも最高の威力を持ち改造によってロケットランチャー並みになるが代わりに爆発範囲が通常より狭く、リロードは普通のGLと同様遅め。素人にはオススメ出来ない。 シビルが持っているのは改造LV4※のもの、弾数は6、マガジンは2個、威力はSである。 ※アンブレラクロニクルズの武器は改造によって弾数、マガジン、威力を強化することができLV5まで改造する事ができる。 ただしLV5までいくと弾数無限になりパワーバランスが崩壊するため本ロワでは使えないものとする。
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A Distinctive Comrade What a queer tale! 『作戦会議』という名の情報交換と、今後の方針の確認を済ませたぼくと梨花ちゃんは民家を出た。 『鬼』の件への危惧は未だに頭の中に存在しているが、だからといって有効な対策があるわけではない。 しかし、自他への危険という理由でこの少女をここに置き去りにすることはできなかった。 その厚意が警官としてか、大人としてか、男性としてかは判然としなかったが、とりあえずは梨花ちゃんをそばに置いておくつもりだ。 「それじゃあ、警察署に向かうけど、いいかな」 「はいなのです。エスコートよろしくですよ、風海」 「ははは。努力するよ」 よもやこんなに小さな女の子の護衛をするとは。 入庁した頃にはそんなこと考えもしなかったな。 あの頃はまだキャリアとしての理想も現実もあったし、 非常識な事件と接することもなかった。 順当に行けば、警視総監は無理でも警視監くらいにはなれたはずなのに。 どこで道を間違えたんだろう。 目頭を押さえたくなるような郷愁に浸っていると、 霧に塗れた視界の中に、巨大な建物が過ぎった。 看板には英語で『警察署』の表記。 おっと、危うく通り過ぎるところだった。 「みぃ。ここですか?」 「うん、ここにぼくと同じ警察の人がたくさんいるんだ」 梨花ちゃんを安心させようとそう言ったが、彼女は不安そうに眉をしかめた。 「でも、入るのはやめておいた方がいいですよ。風海には聞こえないですか?」 「え?」 ぼくは正面にある大きな扉に耳を近づけた。 すぐに鼓膜がその異常を感知して、背中が嫌な汗を流す。 呻き声、悲鳴、銃声、何かが爆ぜる音。液体の飛び散る音、硬いものが壊れる音……。 秩序の権化たる場所には似つかわしくない、むしろ殺人現場にお似合いなものの数々。 子ども特有の敏感な感覚はいち早くそれを察知していたのだ。 こんなところに助けを求めるのは、窃盗犯に荷物を預けるようなものだろう。 「どうするですか?」 「どうしようか」 警察署から少し離れたところで、ぼく達は争いの渦中を眺める。 交通事故が起きたのにパトカーが一台も来ない理由がわかった。 内ゲバ、クーデター、テロ……。現代の日本ではめったに拝めない運動が、どうやらここで起こっているようだ。 あるいは……。いや、そういう考えは止めておこう。そうだとは思いたくない。これは、ここの住民の問題なのだ。 いくら警察官でも、外国の事件に許可なく干渉はできない。それ以前に、護衛対象を危険に晒すことはできない。 時間か政府が解決するのを待つしかないだろう。問題は、これからどうすべきか、ということだ。 「誰か来ましたです」 梨花ちゃんの声に導かれるようにそちらを見ると、一人の老人(東洋人のようだ)が走ってきた。 彼はそばの看板を見上げ、その建築物が警察署だと認識すると、一目散に入っていく。 「あ――――」 危ないですよ、という声がぼくの喉から出るより速く、扉は開き、閉まる。 霧でよく見えなかったが、血を流していたようだ。その状態で病院ではなく、ここに来たということは、恐らく援軍か何かだろう。 民衆の暴動は首謀者から始まり、周囲の人間がどんどん巻き込まれていく。今の人もそういう流れの中にいるのかもしれない。 「とりあえず、ここから離れようか」 「みぃ」 こんなところにいても危険なだけだ。梨花ちゃんもそれを察したらしく、首を縦に振ってくれた。 「梨花ちゃんはどうしてここに来たの?」 「みぃ……。気がついたらここにいたのですよ」 「そうか。ぼくもだよ」 橋の上から水面に視線を落とす。不安定な自分の姿が映っている。 梨花ちゃんは雛見沢という集落に住んでいるらしい。 そこでは仲間たちと仲良く暮らしていて、その人達もここに連れてこられているそうだ。 その証拠となる名簿を見せられた時、ぼくは予想外の驚きを抱く羽目になった。 『式部人見』 『霧崎水明』 『小暮宗一郎』 人見さんの名前が知人の中で先頭だったので、初めは行方不明者リストだろうと思っていたが、 それでは兄さんや小暮さんの表記に説明がつかない。そんな疑念が顔に出ていたのだろう、 梨花ちゃんがもう一枚、資料を恐る恐る渡してくれた。 そこに書かれた『ルール』に目を通した時、ぼくは言葉を失った。 殺し合いの扇動。一言で済ませるなら、そういった文面だった。 生き残れるのは一人だけ。このルール通りならば、ぼくがここから脱出するためには、あの三人に手を掛けなくてはならないことになる。 冗 談 じ ゃ な い ! これが梨花ちゃんを『鬼』にさせたというなら、なるほど、わからない話ではない。 ぼくだって胸の内から巻き起こる感情でどうにかなりそうだった。 言うまでもなく、ぼくには“そういうつもり”は一切ない。 早く三人と合流して、こんな場所から逃げだそう。 ……いや、それだけではだめだ。梨花ちゃんと彼女の友達も保護しなければ。 問題は、ぼくらのように殺人に否定的な人間がどれだけいるか、ということだ。 《 4. ご 褒 美 最後の一人にはご褒美が用意してあります。頑張って殺してください。 》 ご褒美とやらに釣られる人だっているかもしれない。 万が一そうだった場合、できることならそういった人物は拘束したいところだが、装備も人材も不足している。 現時点では諦めるしかないだろう。 ……そうだ、まだ問題はある。名簿以外の人間はどう対応するか、だ。 名簿に載っている人間はここに強制的に連れてこられた可能性が高い。 しかし、この街に住んでいる人間はどうなのだろうか。 先程の警察署での戦闘は連れてこられた人間によるものでなはく、ここの住民によるものだと思いたいが、 そうだとして、それがルールに該当するのだろうか。 《 1. 殺 せ この街から生きて帰りたいのなら、皆殺して最後の一人になること。 》 《 4. ご 褒 美 “最後の一人”にはご褒美が用意してあります。頑張って殺してください。 》 名簿に該当しない人物までこのルールに沿っているとなると、 参加者はかなりの人数になる。 では、先程の暴動は、ルールによる殺し合いだった? そうだとしたら、止めるべきだったかもしれない。 人見さんたちが巻き込まれている可能性だってあったわけだし。 いや、でも梨花ちゃんを巻き込むわけには……。 (まるで手が足りない‥…) 普段から少人数で行動していたが、それでうまくいっていたのは、『警察』という組織があってこそだ。 一人の警官の力など、たかが知れている。 せめてあと一人、頼りになる人がいてくれれば……。 ぼくがため息を吐きだすのと、周囲を震わせる轟音が飛んできたのは、ほぼ同時だった。 正午を告げるサイレンのようなそれは、あまりに場違いのように思える。 それに呼応して霧が晴れ、街の姿がつまびらかになっていく。 「――!」 覗き込んでいた川は赤く染まり、地面は奇妙な質感を帯びた。 《 2. サ イ レ ン で 世 界 は 裏 返 る 生き残りたいならサイレンを聞き逃さないこと。何が起きるかはお楽しみ。 》 つまり、裏返った世界がこれということなのだろうか。 すっかり錆びた金属と化した橋の上を凝視していると、小さな手がぼくの服を掴んだ。 「風海、これはなに……?」 困惑した様子で問う梨花ちゃんに答えを返せない自分が情けない。 慰めになるかどうかはわからないが、少女の手をそっと握る。 「ごめんね、ぼくにもわからないんだ」 オカルトにはずいぶん慣れたと思っていたが、それは日本基準の話だったようだ。 グローバルスタンダードにおいて、自分の経験は大したことないらしい。 今度は逃れようがない。暗い街をざっと見まわしたが、変化のない場所はまったくないのだ。 これから逃れるには、街から脱出するしかないだろう。しかし、どうすれば……。 ドスドスドスドス。 何度目かの思案をしようとした時、聞き慣れた音が耳に飛び込んできた。 新鮮な体験しかしていない場所で感じるこの懐かしさ。 それはぼくの興味を引くには充分過ぎるほどだった。 梨花ちゃんにとってもそうだったようで、彼女の手がぼくを動かし、橋を渡らせる。 暗闇で見づらいが、そこにいたのは頼れる部下だった。 「こ――」 声を掛けようとしたが、直前で口を閉じる。そしてすぐに梨花ちゃんを抱き寄せ、そばにある建物の陰に隠れる。 たしかにそこにいたのは自分の部下の小暮宗一郎だったが、どこか様子がおかしい。 着衣は乱闘の後のように乱れ―――― 血走った目が鋭い視線をあちらこちらに飛ばし―――― 興奮した猛獣のように荒い息を吐き続け―――― 猟銃を構えてその巨体を走らせている。 どう贔屓目に見ても、『一人くらいは殺しちゃってます』といった感じだ。何かあったのだろうか。 第三者の一般人が今の彼を見れば、一目散に逃げ出すか、泣いて許しを請うだろう。 「風海、あの危険極まりない男を知っているの?」 腕の中の梨花ちゃんがわずかに顔を赤くして問う。 強く抱きすぎたかな。そっと力を緩めて少女を解放する。 「一応ね。ところで、それが素の口調かな?」 すると梨花ちゃんは驚いた顔をして口を押さえる。 あんなことが起これば、化けの皮も現れるだろう。 彼女は一度ぼくに背を向けて、すぐにくるりと振り返る。 「みぃ? 風海が何を言っているか、ボクにはちんぷんかんぷんなのですよ。にぱ~」 「ごめんごめん。変なこと聞いちゃったね」 こういう場合、素直に向こうに合わせてやるのが“大人”というものだ。 ぼくは自分の成長に感心しつつ、視線を小暮さんに戻す。 彼はここから少し離れたガソリンスタンドの中に入っていった。 あまりの変貌に一度躊躇してしまったが、上司が部下を怖れてどうする。 早く合流しないと。 「そっちへ行っちゃだめなのです」 追跡しようとしたぼくを小さな手が止める。 当然かもしれない。こんな小さな子から見れば、 今の小暮さんは鬼同然だろう。そういえば、この子も『鬼』だった。 無理に彼と会わせて、もし暴走してしまったら捜索どころではなくなる。 さて、どうしよう。 自分のことだけなら楽観視もできるが、梨花ちゃんのこともある。 迂闊な行動は許されない。きちんと冷静に、客観的に状況を判断し、行動しなければ。 ぼくは―――――― ⇒ 小暮さんの後を追うことにした 梨花ちゃんを連れて素早く避難した ◆ 何もかも諦めて梨花ちゃんとこの街で暮らすことにした 【C-2跳ね橋制御室付近/一日目夜】 【古手 梨花@ひぐらしのなく頃に】 [状態]:健康。L3-。鷹野への殺意。自分をこの世界に連れてきた「誰か」に対する強烈な怒り。 [装備]:山狗のナイフ [道具]:懐中電灯、山狗死体処理班のバッグ(中身確認済み。名簿も入っていました) [思考・状況] 基本行動方針:この異界から脱出し、記憶を『次の世界』へ引き継ぐ。 1:あの大男を追うなんて冗談じゃない。 2:自分をこの世界に連れてきた「誰か」は絶対に許さない。 3:風海は信用してみる。 ※皆殺し編直後より参戦。 ※名簿に赤坂の名前が無い事はそれほど気にしていません。 【風海 純也@流行り神】 [状態]:健康。梨花に対する警戒心。 [装備]:拳銃@現実世界 [道具]:御札@現実、防弾ジャケット@ひぐらしのなく頃に、防刃ジャケット@ひぐらしのなく頃に 射影器@零、自分のバッグ(小)(中に何が入っているかはわかりません) [思考・状況] 基本行動方針:サイレントヒルの謎を解き明かし、人見さんたちと脱出する。 1:どうしよう。 2:人見さんと兄さんを探す。 back 目次へ next 魔弾の射手 時系列順・目次 Sensible solution = Realistic Conception 猫歩肪当(猫も歩けば棒に当る) 投下順・目次 テレホンコール back キャラ追跡表 next Self question 古手梨花 Courage point Self question 風海純也 Courage point
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1.始原 全ての始まりの時、人は何も持たなかった 身体には苦痛、心には憎悪の他には何も 争い傷つけあいながら、死ぬことすら叶わず 永遠の泥土の中に、人は絶望していった 2.誕生 ある男は太陽に蛇を捧げ、救いを祈り ある女は太陽に葦を捧げ、喜びを願った 大地に蔓延する悲しみを憐み、神はこの一組の男女から生まれた 3.救済 神は時間を作り、昼と夜を切り分けた 人に救いの道を示し、喜びを与え そして人から無限の時間を預かった 4.創造 神は自分に従い、人を導く存在を作った 赤の神スチェルバラ 黄の神ロブセル・ビス そして大勢の神たちと天使である 最後に神は楽園を作り出そうとした ただ人が在るだけで幸せに足る世界 5.約束 しかし神はそこで力尽きて倒れた 世界の誰もがそれを嘆き悲しんだが 神はそのまま息を失い、土に還った 今一度、生まれてくることを人に約束して 6.信仰 神は失われたわけではない 私たちが信仰を忘れず、祈りを捧げる 楽園への道が開かれる日を 待ち望みながら
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ヤンママ -- 暴犬 (2011-04-11 21 10 10) 二児(アベ、シザー)のオモリにくたびれて伸びているところですな。クローディアおばちゃんに押し付けてしまいましょう。 -- 名無しさん (2011-04-12 07 13 22) 拾ったドリンクを自棄飲みする人生に疲れきって逆噴射し始めたおばさんに預けたら、何教えられるか分かったもんじゃありませんよ! -- 暴犬 (2011-04-12 18 17 32) 名前 コメント
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罪と罰 “そいつ”の見てくれは、とりあえず人の形をしてはいたが、しかし人間ではないと断言できる代物であった。 一言で言えば、看護婦である。 ナースキャップを頭に乗せ、ボタンが外れて豊満な胸元を派手に曝け出す看護服を身に着けており、やや短めのスカートからは、モデルを思わせる長く美しい脚が伸びている。 男なら、下心をくすぐられても無理はない体型である。 しかし真冬はそういった色事には興味が無かったし、よしんば健康的な青少年であったとしても、そいつの顔を見れば、特殊な趣味嗜好を持つ男以外は、下心など軽く吹っ飛んでしまうであろうと確信する。 その信じ難いご面相に、真冬は思わず息を呑んだ。 ――顔がない。 そいつの頭部は、目も鼻も口も存在を確認できないほど、腫瘍のようなもので腫れ上がっていた。 でたらめに捏ね上げた粘土細工で頭を覆っているかのようで、ナースキャップが無ければ顔の前後が区別できないほどである。 大きな瘤をいくつも膨らませた頭を小刻みに、時には苦しみ悶えるように大きく震わせながら、ぎこちない足取りでこちらに向かってくる様は、真冬の身体を石にするのに十分な破壊力であった。 雑誌には鬼と説明されているが、それを無条件に鵜呑みにできるだけの状況では、まだなかった。 電車の中を顔面を腫らした看護婦がうろつくなどという、おおよそ気違いじみた光景だけに、あまりにも突然な目の前の現状を、真冬はまだ受け止めきれずにいた。 どうするか?話しかける?否、話が通じる相手にはどうしても見えない。では攻撃か? 答えはすぐに決まった。なぜなら、その看護婦の手には、鈍く光を反射する黒い鉄の塊――拳銃が握られていたからである。 真冬は看護婦を刺激しないよう、少しずつ足を後ろへ踏み出して後退して行く。 目指すは車両を連結する扉だ。扉を隔てれば、とりあえず生身で銃弾を受け止めるよりははるかに生存率が上がる。 そして他の車両の中にいるかもしれない生存者を確認し、車掌に接触するなり何なりして事態を打開しよう。頭をフル回転させてそんな方針を固めた。 後になって考えてみれば、この異常な車両を果たしてまともな車掌が操作しているのか、非常に疑わしくはあったのだが、とにかくこの時は、目の前の危機を回避することで頭が一杯だったのだ。 前進する看護婦に合わせて、一歩、また一歩と後退していく。連結扉までの短い距離を、気が遠くなるほど長く感じるような時間をかけ、その動作を繰り返していく。 そして数メートルほど後退した頃、ようやく背中がひんやりとした板に触れる感触がした。 反射的に身を翻しかけて、その寸前で思い留まる。 不用意に行動を起こせば、看護婦を刺激して銃弾を浴びる可能性が高い。一瞬、ほんの一瞬でいい、あの拳銃を封じることができれば―― 真冬は手に握り締めている湾曲した車両のパーツを見つめ、振り回すのに最適な質量を持つそれを手放すか否か、ほんの僅かに逡巡した。 その間にも、看護婦は拳銃を持つ手を水平に持ち上げる。金属が起こす冷えた摩擦音が聞こえた。 迷っている暇はない。真冬は手にしていた車両のパーツを、看護婦が構える拳銃めがけて投げつけた。 湾曲したラインを持つそれは真冬の狙いを大きく逸れ、一直線に看護婦の肩に直撃した。 それでも投げた甲斐はあった。看護婦の華奢な二の腕が大きく横にぶれ、体勢がやや斜めに傾く。パァンと乾いた破裂音が車内に鳴り響いたが、銃弾はあさっての方向に飛び出した。 チャンスだ。もはや一刻の猶予もない。弾かれたように連結用扉にかじりつく。 握り締めたドアノブに全身全霊の力をかけ、真冬は渾身の怒号と共に扉を押し開いた。 「うわあああああああっ!」 パァン。乾いた破裂音が列車内に響き渡り、熱の塊がちりっと頬を引っかく。 パァン。脇腹を熱い何かが掠めた気がするが、気にする余裕はない。身体を扉の向こうに押し込み、再び全力をもって鉄の扉を閉じた。 パァン。パァン。もう一枚、次の車両の扉を急いで開けた瞬間、2回破裂音が響いたが、一発目は扉にめり込み、二発目は分厚いガラスを貫いて床にその破片を撒き散らすに止まった。 最後の扉は閉まったが、不安はまだ治まらない。あの看護婦がドアを開閉する知性が無いという保障はどこにもないからだ。 座席の陰に転がり込み、縋るように周囲を見渡す。 最悪なことに、この無人の車両には、看護婦を撃退できるだけの素材は全く見当たらなかった。 やはりあれを投げるべきではなかったか?じりじりと後悔の念がせり上がってくる。 しかし、ふと、先ほどから銃声が聞こえてこないことに気が付いた。 頭をなるべく出さないように気をつけながらドアの向こうを見てみると、思考回路を持たないロボットのように、ドアの前で立ち往生している看護婦の姿が見えた。 真冬が身体を強張らせていると、看護婦はスイッチが切り替わったように突然踵を返し、よろよろと車両の奥へ戻ってしまった。 どうやら、あの異形の看護婦にはさして高い知能が備わっていないらしい。 真冬はようやく危機が去ったことを実感し、浅く呼吸を繰り返して安堵と不安を吐き出しながら、床の上にすっかり脱力した腰を落とした。 ◆ 少し落ち着いてから、真冬は改めて周囲を見渡した。 車両は閑散としており、窓から見える空も真っ暗で、まるで終電のようである。だが、真冬の見慣れた日本の電車とは明らかに様子が違った。 吊り下げられた邪魔な広告が見当たらないし、立っている乗客を支えるのは、日本ではポピュラーな吊り革ではなく、先ほど真冬が手にしていた湾曲したパーツ――壁に取り付けられた持ち手である。 一体何がどうしてどうなって、こんなどこかの外国のような車両で目が覚めたのだろうか。 真冬は眠る前の記憶を思い起こしてみるが、思い浮かぶのはたった一人の肉親である妹、深紅のあどけない顔と、慣れ親しんだ自宅、そしてごくごく当たり前な車両の風景のみで、やはり答えは見つかりそうになかった。 とりあえず立ち上がろうと腰を浮かすと、脇腹がずきりと痛み、咄嗟に座席に手を突いてよろめく体を何とか支える。 気が付けば真冬の白い上着には真っ赤な染みが広がっており、その下に着込んでいる黒いシャツを捲り上げて脇腹を確認すると、横一直線に皮膚がざっくりと抉れていた。 4センチほどの裂け目からは、目も眩むような赤い鮮血が溢れ出している。 真冬は現実から逃げるようにぱっとシャツを戻した。 ほんの少し掠れただけなのに、熊に引っかかれたかのような威力。もし命中していたらと思うとぞっとする。 銃という文明の利器の破壊力を身をもって体感し、背中に嫌な汗が流れた。 車両の座席を一つ一つ確認しながら進んでいくと、まるで負傷した真冬のためにあつらえたかのように、座席の上に救急箱が置かれていた。 無人の電車に、ぽつんと放置されている救急箱――あまりに不自然だ。使っても大丈夫なのだろうか? 恐る恐る中身を確認する。 包帯、ガーゼ、消毒液、鋏、ピンセット、シート状の綿…至って普通の医療品が入っている。まだ真新しく、使っても問題なさそうだ。 小ビンに入ったアスピリンもあるが、流石に飲む勇気はなかった。 一体誰が?何故こんなものを? 得体の知れない存在によってばら撒かれたチーズに、何も知らずホイホイ吸い寄せられるネズミのような気分だ。 この餌の向こうに待っているのは、果たしてネズミ捕りか、それとも―― とりあえず傷の手当てをした後、真冬は車掌に会うべく先頭車両を目指した。 誰かいないかという期待は、扉を潜るたびにことごとく空振りする。車内は人っ子一人おらず、異界の住人にすら遭遇しない。 こんな夢、早く冷めてしまいたい。 閑散とした電車の中を、真冬は孤独感と戦いながら進み続けた。 次の車両の扉に手をかける。そしてノブを捻ろうとして、真冬の体が硬直した。 次の車両に――いる。異形の気配をはっきり感じる。 窓から次の車両の中を確認してみると、先ほど遭遇した異形の看護婦と全く同じ、頭を腫れ上がらせた看護婦が、車両のど真ん中で棒立ちになっている後ろ姿が確認できた。 しかし、この看護婦の場合、得物は拳銃ではなく、バールのようなものであった。 これは不幸中の幸いだ。拳銃を相手にするよりは、いくらか勝てる見込みがある。 向こうはこちらに気が付いていない。この隙を突けば勝機が掴めるが、どうする?失敗は許されない。自分にできるか? 自問自答を繰り返し、真冬は静かに決断を下した。 ――やるしか…ない。 なるべく音を立てないよう、静かにドアノブを捻り、慎重にゆっくりと扉をスライドさせ、身体を車両の連結部に滑り込ませる。 次の車両にいる看護婦に、どこもおかしな動きはない。気づかれていないようだ。 そして、次の車両のドアノブに手をかけ、今まで以上に慎重にノブを捻る。 まず指一本分開く。気づかれない。 さらに開き、手が通るくらい開く。まだ大丈夫だ。 もう一息。ついに肩までが通るくらいまで開いた。 …いける! 次の一押しで、真冬は勢いよく車両の中に飛び込んだ。そのまま反応しかけている看護婦の背中めがけ、渾身の当て身を食らわせる。 吹っ飛ばされた看護婦はもんどりうって床に倒れこんだ。 体勢が崩れたのを狙って、真冬は看護婦の上半身に跨り、そいつが持っていた得物――バールと思っていたが、実際は鉄パイプだった――を奪い取った。 服に掴みかかろうとする看護婦の手に構わず、真冬は目をぎゅっと閉じて鉄パイプを振り下ろした。 鉄パイプから伝わる、柔らかい肉と、その下の硬い骨を叩く感触のあまりの生々しさに、頭の中が真っ暗になりかける。 頼む、早く動かなくなってくれ…! ひたすら強く願いながら、真冬は無我夢中で鉄パイプを振るい、看護婦が完全に動かなくなるまで、力の限り打ちのめし続けた。 ようやく看護婦を叩きのめすと、真冬はもはやただの肉塊と成り果てたそれの横に腰を落とし、肩で息をしながら、闇に引き篭もろうとする意識と必死に格闘した。 元より真冬は誰かを攻撃することは苦手だ。まして異形とはいえ、血肉を持つ生身の生き物が相手なら尚更である。 こうして血の通った生き物に力を振るうなど、今までなら考えられない行為だった。 たとえ相手に、こちらを殺そうとする意思があったとしてもだ。 とにかく、このままじっとしているわけもいかない。 真冬は血まみれの鉄パイプを支えに、震える足腰を無理矢理動かしてゆっくりと立ち上がった。 黒い窓に映り込む自分の顔は、まるで亡者の仲間入りをしてしまったかのように、すっかり血の気が引いて憔悴しきっていた。返り血も少し付いている。 こんな格好、深紅にはとても見せられない。あまりの気まずさに、黒いシャツの裾で顔の返り血を拭う。 さて、ようやく先頭まで辿り着いた。早く車掌に会って、この電車が見舞われている異常事態を話さねばなるまい。 そこまで考えながら操縦席の扉のノブを握り、ふと、真冬はある違和感に気が付いた。 これだけ大騒ぎしたのに、一向に車掌が出てくる気配がない。 それどころか、車掌がいるはずの扉の向こうに――人の気配が、ない。 まさか、いや、そんなはずは。 勇気を振り絞り、真冬は扉のノブを捻った。鉄の重い摩擦音を響かせながら、操縦席の扉がゆっくり口を開く。 突然、凄まじい突風が顔面を直撃した。何が起こったのか解らず、真冬は反射的に手で顔を覆う。 「…一体…どうなってるんだ…!?」 目の前に広がる光景に、真冬は瞬きすら忘れて呆然と呟いた。 扉の向こうには何もなかった。 ただ一本のレールのみが、真冬の未来を突きつけるかのように、暗闇の彼方に向かって真っ直ぐ伸びているだけであった。 ◆ **** 鬼特集その8~闇人~ 零式・甲式・乙式の三種類いる、冥府からのお客さんだよ。 とっても賢い人たちなので、騙されないように気をつけてね! 彼らにとって光は大敵。その敏感な肌を守るため、常に厚着をしている苦労人だ。 可哀相なので、良い子のみんなはライトの光を当てないように。カメラのフラッシュも厳禁だ。ロビー君との約束だよ! 今回取り上げた鬼は、まだまだほんの一握り! これからもドンドン追加しちゃうから、参加者のみんなは楽しみに待っててね! **** あれから時間を持て余し、しかたなく車内で拾った薄気味の悪い雑誌に目を通し終えた直後のこと。 車輪がレールと擦れあう金きり音が鳴り響き、真冬はぱっと顔を上げて外を見た。 窓の外には相変わらず厚い闇のカーテンしか見えないが、体が後ろから圧される感覚からして、どうやらこの電車はようやく停止するらしい。 圧迫感がなくなったのに合わせ、車両の出入り口が一斉に口を開く。 それと同時に、外からむわっと車内に雪崩れ込んできたむせ返るような瘴気に、真冬はたまらず顔を顰めた。 酷い空気だ。この車両内のなんとも言えない圧迫感も不快だったが、外の空気はそれ以上だ。吐き気すら感じる。 駅に到着しさえすればなんとかなるかと思っていたが、とんだ思い違いだった。 ここはもはや、真冬の知っている日本ではない。この駅を出たとしても、電車に戻ったとしても、氷室邸に辿り着くことも、家に戻ることも決してできないだろうと確信できた。 あの異形の看護婦がたむろする電車で目覚めた時点で、既に真冬は、虫かごに放り込まれた哀れな虫けらに過ぎなかったのだ。 とりあえず出入り口の前に立ち、ショルダーバッグの中から懐中電灯を取り出して足元を照らす。 想像していたコンクリートの足場はなかった。代わりに、赤茶けた鉄で構成された金網の床が広がっていた。 ライトの光をあちこちに移してみても、真冬が期待していたまっとうな駅の風景はどこにもない。 あるのは錆びついた金網の仕切りと、ところどころで蠢く異形の影、そして―― それが目に入った瞬間、真冬は心臓を握り潰されるような感覚を味わった。 博物館に展示された本物の人体標本のように、それは骨や内臓の断面図を曝け出している。 恐らく白人だろうか。金髪の“彼”は、頭の天辺から下半身にかけてをスイカのごとく左右真っ二つにかち割られ、飛び散った血と肉片の上に横たわっていた。 なんてことだ…! 一体どうすればこんな人間離れした真似ができるのだろう。人間を、それも大の大人を、頭から真っ二つにするなど! 喉から酸っぱい臭いがこみ上げる。思わず口元を手で覆い、今まさに逆流せんとする消化液を必死で押さえ込む。 こんな所からは一刻も早く離れたい。いや、なんとしても離れなければならない。 手足が震えて言うことを聞かないが、それでも動かねばならない。 左右別々に分かたれた虚ろな目から顔を逸らしつつ、とにかくなんでもいいから出口を探そうとした、その時だった。 『かわいそうに…』 誰かを哀れむ男性の小さな囁きが、真冬の背中に降ってきた。…真っ二つになった、白人男性の方からだ。 そのあまりに悲哀に満ちた響きは、頭の中を支配していた吐き気をもよおすほどの恐怖を僅かに薄れさせた。 普段なら、滅多なことでは自分から異界の者にコンタクトは取ることないのだが、この状況に陥って始めて遭遇した“心ある存在”を、どうしても無視できなかった。 意を決して振り返る。予想通り、あの真っ二つにされた亡骸の主がぼんやりとした輪郭で佇んでいた。 顔を鮮血に染めてはいるものの、さすがに真っ二つのままではなく、それが真冬にとって救いであった。 「…僕の言葉、解りますか?」 真冬の問いかけに、彼は「ああ」と小さく頷いた。 日本語で話しかけておいてなんだが、外国人と普通に意思疎通できるのが不思議だった。 「貴方は、どうしてここに?」 『…メアリー…妻に会いに来たんだ…』 彼――ジェイムズ=サンダーランドは、おぼろな声で、ぽつりぽつりと自らの半生を語り始めた。 不明瞭な声から紡がれる記憶の一つ一つをなんとか繋ぎ合わせてみるに、どうやら彼は、死んだ妻から手紙を受け取ったと思い込み、彼女との思い出が詰まったこの街へ再びやって来たらしい。 そして妻と過した懐かしいあの場所で、この手で殺したはずの彼女――もしかすると、それすらも彼の妄想の産物かもしれないが――と再会したことで、それまで忘れていた、否、逃げていた現実を思い出し、全ての贖罪のために湖へ己の身を沈めた。 ――ところが、どうも彼は死にきれなかったらしく、気が付くと湖の岸辺に横たわっていたという。 『これは私の妄想の続きなのか…それとも、これこそが私の煉獄なのか…』 「…それで、なぜこんな姿に?」 真冬の問いかけに対し、ジェイムズは己の無残な体を見下ろしながら、何かを悟ったかのような、諦めたような、絶望したような、そんな酷く穏やかな声音で呟いた。 『私は罰を受けたんだ』 「…罰?」 『そう…妻をこの手にかけ、その上彼女の意思を…裏切ってしまった罰だ。…君は、どんな罪を犯したんだ?』 「僕は…」 ――何もしていない。そう声に出す寸前で、真冬は喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。 「…分かりません。ここに来てから解らないことだらけです。もしかしたら、本当は知らないうちに誰かを傷つけたり、犠牲にしたりしているかもしれない…」 『そうか…』 気のせいかもしれないが、彼のぼやけた表情が、少し哀しげに揺らいだように見えた。 真冬が会話を続けようと口を開きかけた直後、駅の構内に設置されているスピーカーが、突如として耳障りなノイズを発し始めた。 ここには自分しかいないと思い込んでいたが、どうやら他にも誰かがいるらしい。 ノイズは次第に鮮明になっていき、この血と錆で彩られた世界観にはおよそ不釣合いな、賑やかな歓声が聞こえてくる。 酷くシュールな歓声が収まると、ラジオのDJよろしく陽気な男性の声が、ご機嫌な挨拶口上を述べてから、クイズに参加する幸福で不幸な挑戦者と称して、3名の名前を読み上げた。 その中には、今こうして会話を交わしているジェイムズの名も含まれていた。…つまり、死亡者リストというわけだ。 クイズ形式を取ってはいるが、その問題と選択肢はまるで、たった今ここに辿り着いたばかりの真冬に向け、この街におけるルールを解説しているかのようであった。 たった一人になるまで、殺し合いをする――そんな日常からかけ離れた、たった一つのおぞましいルールが、この街――サイレントヒルを支配している。 信じ難い。が、今まで次々と経験した怪異の数々が、そしてジェイムズの目を覆うような骸が、そのルールを否応にも信じざるを得なくするのだった。 挑戦者として名を呼ばれたジェイムズは、果たしてどうするのか?真冬は彼の反応を待った。 『いいか…君は絶対に、この世界の馬鹿げた掟に…囚われてはいけない…』 彼にとっては、もはや褒賞などどうでもいいことなのだろう。ジェイムズは放送を全て無視し、真冬に向かって諭すように語りかけた。 ――私のようには、決してなるな。 最後の言葉には、そんな願いが込められているような気がした。 ご機嫌なDJの爽やかな挨拶と共に放送が終わると、ジェイムズは輪郭の虚ろな瞳で真冬を見つめながら、暗闇の中へ溶け込むように消えていった。 真冬は、今度こそ独りになった。 「…ありがとう、ございました」 ここで心を折るわけにはいかない。目を背けるわけにはいかない。 なぜこんな異常な事態に巻き込まれているのかは解らないが、きっと何か重要な意味があるに違いない。 それを確かめるまでは、決して逃げてはいけない。 そして何より、今ここで挫けてしまっては、たった一人で自分を待っている深紅のもとに、二度と帰れなくなる――そんな気がするのだ。 暗闇にたった一人残された真冬は、ジェイムズの亡骸にそっと別れを告げる。 彼の言葉を胸の奥に秘め、闇を切り裂くたった一つの懐中電灯と、血に濡れた鉄パイプを強く握り締めながら、吐き気をもよおす瘴気の漂う血と錆の世界に、力強く一歩を踏み出した。 頭の片隅で、この先に待ち受けている、ジェイムズがあの壮絶な最期を迎えるまでに味わったであろう救いのない悪夢を予感しながら。 【D-5駅構内/1日目夜】 【雛咲真冬@零~ZERO~】 [状態]脇腹に軽度の銃創(処置済み)、未知の世界への恐れと脱出への強い決意 [装備]鉄パイプ@サイレントヒルシリーズ [道具]メモ帳、射影機@零~ZERO~、クリーチャー詳細付き雑誌@オリジナル、ショルダーバッグ(中身不明) [思考・状況] 基本行動方針:サイレントヒルから脱出する 0:ジェイムズさん… 1:この世界は一体? 2:とにかく駅から出る 3:街で生きている人を探す back 目次へ next 愛と罪が集う街(前編) 時系列順・目次 暗闇通り探検隊 愛と罪が集う街(前編) 投下順・目次 暗闇通り探検隊 back キャラ追跡表 next 暗中模索/臨戦態勢/カンニング 雛咲真冬 猫歩肪当(猫も歩けば棒に当る)
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トリプルハンバーグ弁当 おかずはハンバーグ3つのみという、男らしいというか子供向けというかそんな弁当。950円。 小暮宗一郎の好きな食べ物がハンバーグだということなのでそれから連想したもの。
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■レオン・S・ケネディ……8 007 老頭児&Rookie 048 DEEP RISING 100 噛み合わない「世界」 101 リセット 112 PITCH BLACKDEAD SPACE 134 The FEAST 1The FEAST 2 137 Against the Wind 145 最後の詩 ■シェリー・バーキン……2(1) 015 惑う子羊 048 DEEP RISING 088 エレル――ELEL――